2007年7月1日日曜日

八戸自動車史と八戸市営バスを考える 1

本を漫然と読んでいると気づかないことも、えっ、どうしてだろうと思うと次々に調べたくなるもの。自動車史の2を入力していて、八戸市営バスにつながることを知らされた。
つまり、現今では大赤字に悩んでいる市営バスを、かくなる事態が生ずるとも思わずに、市民の利便性を考えて、八戸にバス事業が必要だと、昭和六年ごろから検討。神田市長の頃。
市制は昭和四年からで、ほとんど直ぐにバス事業を開始したことになる。市民の足の確保は重要事項だった。
八戸自動車史でもわかるように、乗客の区分として、乗り合いバスと貸切自動車、つまりタクシーとに分類される。八戸市営バスは勿論乗り合い。
この乗り合いの権利を上杉修氏等から買い上げる。その辺を調べようと「八戸市議会史」を開いてみた。
すると昭和五年第五回定例会(十一月二十五日)
失業救済商港埋立と自動車経営に次の一文あり。
世界的不況が地方の八戸銀行の休業等にまで波及した。そのため八戸港を商港として埋立の計画をすることでその事業によって失業者の救済に当てようとするものである」との提案理由をのべた。
これに対して、大久保弥三郎議員は「埋立工事は拡張によるものだというが、三五万円の公債を五年間すえ置一五年償還とすれば、利子支払いがかなりのものになる、現在以上の公債は市民を苦しめるものではないか」との反対意見をのべた。これに答えて神田市長は「埋立によって漁港商港として発展する見通しである」と答えた。
これは実に面白い。というのは戦後間もなく八戸市が倒産し、財政再建団体に陥るもとがこれ。大久保弥三郎も卓見、また、神田もこれが新産都市のもとになるため、これまた間違いがなかった。
採決の結果拡立者多数で原案通り可決確立した。
 これに続いて、第三六号の乗合自動車経営の件の審議に入り、神田市長は
「本案は、買収交渉と路線の認可を受ける都合上上提したので、具体的な予算等については、明年度予算会議のときに、市財政に計上しうるようであれば改めて決議を願いたい。また、それ以前に計上の目安がつけば、市是調査会等に諮るつもりである」
と提案理由を述べた。
 これに対して理由書と区間賃金表とが配布されたが収支予算表が添付されていなかったため、大久保弥三郎議員は「資本関係及び現在の経営者との関係を詳細にしないのは抽象的すぎる。また、実施するとしたらその収支はどういう予定になっているのか。乗合馬車、営業自動車が利用されている現在時期尚早ではないか」との意見を提出した。神田市長は「資金関係や詳細な数字は、明年度予算に計上出来た場合、その席で御決議願いたい」と答弁した。
 なお承認となった市営自動車業計画書の概要は、市内を四区として一区五銭の乗車賃とす。運転する車数は七台で購入金の二一○○○円は年賦式とする。基点を新荒町、八戸駅両所に置く。等であった。
次に出るのは昭和七年第四回定例会。
仮契約までに至った。なお本件は本契約締結ならびに準備のため急を要するとし、急施案件として、ここで遠山議長は、市長から追加提出された、急施第一二号の自動車買収に関する件の付議を宣告した。
まず神田市長は「本案については一昨年市会で協賛を得て以来、市内の乗合自動車営業者と買収の交渉を繰返してきたが、過般、このために定められた委員と協議の結果、県保安課長の斡旋によってここに提出した」と説明を述べ、市民交通の便宜を図りまた市の繁栄にも通ずることを力説した。これに対して大久保弥三郎議員は、本案は何等急施を要するものではないと反論さらに、予算を伴わない本案件は議案として不適当であるとして、撤回を要求した。神田市長は同議員に答えて「本来ならば議会招集の際に通告すべき処ながら、出張中のためそれが出来なかった。急施としたのは、仮契約から本契約に進む関係上からであり、予算の件は十月の営業開始以前に審議を願いたい」と述べた。しかし同議員は「本案については五年度の市会で、六年度には予算を計上すると言明しておきながら、六年度にも七年度にも計上されていない。二三、五〇〇円という大金をこの窮迫した市の財政からいかに捻出するかという点が不明である以上、賛成はできない」と、あくまでも予算提出を要求、さらに「乗合馬車業者の失業対策はどうなっているのか」等、とうとうと長広舌をふるって反対した。
次いで西村菊次郎議員が立ち「だいたい大久保(弥)議員と同意見である、乗合馬車から市営自動車に推移していくのは時代の流れで、むしろ当然である。しかし、この買収案を急施として提出した裏には、何んらかの事情があるのではないか。また本案について、なぜ、営業権、自動車価格等の金額をそれぞれ別個に明記していないのか。さらに、失業補償は馬車業者にこそ支払うべきであり、これを新たに追加することを提案したい」と意見を述べた。神田市長は答えて「買収については、かねてから選出されている委員が折衝した結果である。また、予算はたしかに付議すべきであったが、前述した事情の通りである買収という形ではなく、新たに権利を取るとの意見については、鉄道省の管理に属しその手続は困難であり、現在の乗合自動車業者を買収することが、県および鉄道省の一致した意向である」と述べたが、同議員はさらに、現在七人の業者が営業権を持っているが、うち一人分だけを買収して市営としてはどうかと意見を述べたが、市長は不可能であると答えた、この後、西村、大久保(弥)両議員が反対意見をなおも繰返したが、遠山議長は四日間休憩し七月四日に、再び本会議を開く旨を宣告、五時五分に散会となった。
市営自動車買収案決定
 自動車買収案を審議する市会の休会明け会議は、予定通り七月四日に開会された。
 議長ならび副議長欠席のため、最年長議員である近藤岩太郎議員が、金沢慶蔵議員を仮議長に指名し満場異議なくこれを認めて審議に入った。
 会議に先立ち金沢仮議長は議決第一八号の昭和七年度八戸市歳入歳出追加予算と同一九号の八戸市営乗合自動車乗車料条例認定の件が市長から追加提案となっている旨、また六月二九日に急施案件として提出された急施第四号の乗合自動車買収に開する件については、日数を経ているため普通案件とすること以上を報告、さらに「第四号実は論が尽きたと思われるので」と、ただちに採決に入る旨を宣告した。
 しかし大久保万吉議員は市長に対して、改めてこの場で言明頂きたいと、従来の運転手をそのまま市営自動車に採用する件について確認を求め、市長は「本人の希望があれば採用する」と答えた。
 また大久保弥三郎議員は「現在七台の自動車のうち二台は廃棄されているのに、七台を買収するということはどういう事情であるのか」と市長に詰め寄り、さらに失業補償を支出する理由、その支払期日の協定の可否等を訥々と問いただし、仮契約書の提案を要求した。神田市長はこれに対して「交渉当初は七台であったためそのまま話を進めた。ついては、権利は営業権と一緒であり車体と合せて二五、〇〇〇円、失業補償費二、〇〇〇円の支払期日は七・八月とし、以上は保安課長の仲介の許に協定したものである。なお仮契約書は調印が未済であるためまだ提出できない」と答弁した。同議員は「仮契約成立以前に市会に提案するのは納得できない」としつこく食い下がり、神田市長は、「学校建築の場合も決議後に契約している」と説明した。しかし「入札によって契約者を決定する学校建築と本件とは違う問題である」として、仮契約の承認を市会に求めるべきだとする同議員の自説をまげず食いさがったが、神田市長は「本案は仮契約書の承認ではなく買収の議案である」とこれをつっぱねた。
 ここで浪打石丸議員が立ち「本件はすでに市会で決議され、委員を設けて交渉した結果仮契約をなすまでに至っているのだから、本市会の議決を経て、取急ぎ準備しなければならない、すみやかに可決すべきである」と発言すると異議なしの声が統いた。
 しかし西村菊次郎議員は、客馬者営業者に対する具体的な救済方法について発言し、さらに「七台の自動車のうち二台は廃棄になっているのだから買収価格を二、〇〇〇乃至二、五〇〇円に減額修正すべきである」と主張。これについて神田市長は「客馬車営業者に対する件は後刻協議願いたい」とだけ答えた。
 次に再び大久保(弥)議員が立ち、仮契約書の提出を要求、さらに廃棄処分の自動車を含めて七台とすることは市会を欺くことだと決めつけた。しかし神田市長は「欺くつもりならば七台のうち二台廃棄とは書かない」と逆襲し、委員と仲介者立合の許に公明に協定された点を強調した。続いて、浪打、石橋要吉、高谷金五郎、以上三議員が採決を要求した。
議決第一九号の八戸市営自動車乗車料条例認定の件を付議、西村議員は「市長は客馬車は併立できると考えているようだが」と前置きして「市営自動車料が、八戸、小中野間一〇銭とすれば、当然客馬車業者が圧迫されることになる。この点の救護策を伺いたい」と、時代の変遷によって落伍していかざるをえない業者への救援を力説、神田市長は「市営自動車の実現は、すでに二年間にわたる懸案であり、客馬車業者もそれなりに考えていると思う。しかし実際に直面してみなければその対処も困難であり、後刻充分に協議したい」と述べた。また同議員は、鮫および湊の工業地帯に通う労働者の乗車料金の問題を取上げ「往復切符を発売するなど、市長の配慮を促し、神田市長は「この場合は第八条に定めた(臨時の場合)として取扱う考えで、諸事情はあるにしろ五割以内の割引を考えている」と答弁した。
 ここで時間延長が宣告されたのに続いて、木村芳美議員は「本案はすでに決定した買収案および予算に付帯するものであるから、原案に賛成する」とのべ、金沢仮議長は「本案第六条に対しての大久保(弥)議員の修正意見には賛成がなく、全議員賛成と認めて、原案通り決定する」と宣告、満場異議なくこれを認めて閉会となった。
この新聞記事を探した。
昭和五年奥南新報から
乗合自動車市営は現営業者を路頭に迷わせる
この経営は我々に一任して欲しいと
一昨日八日市役所に陳情
市の交通利便を得んがため過般の市会において乗合自動車経営を決議したことは既報の通りであるが右に関し現在経営している乗合自動車業者は斯く市営を以ってせらるるに於いては全く自分等の職業を奪われることとなりこれから路頭に迷うものであると業者間で寄り集まり協議中であったが、同業者吉田三郎兵衛、岩淵栄助、小笠原八十美、藤田金五郎、宮沢芳蔵、市川文丸の七氏は八日午後三時市役所に神田市長を訪問し該問題に関して陳情書を提出した。内容は市営をもってせらるると全く路頭に迷う。市が之を経営せんとする目的は営業者に於いても十分考慮し市民の利便を図り十分の満足を与えるべく努力し追々斯業者を一丸とした株式会社を組織する考えであるからこの際市が莫大な金額を之に投じるよりもこの経営は我々に一任して欲しい。
具体的用件として左の三項を上げた