2008年10月12日日曜日

時効せまる・若花菜さん殺し 4

若花菜さんの家族はだれもたばこを吸わないことから、捜査本部は犯人が吸った可能性が強いとみて、同市内のスーパーなどから犯行当日かそれ以前に同じたばこを買った不審人物を目撃しなかったかなど、聞き込み捜査を進めている。
 捜査長期化の見通し
松尾県警本部長が会見、犯行動機特定できず

若花菜さん刺殺事件について、松尾好将警本部長は八日、県警本部で開かれた定例記者会見の席上、「容疑者に結びつく有力な物証が少ないうえ、物取り、怨恨、いたずら目的の犯行か、動機を特定できず、直ちに解決できる状況ではない」などと述べ、捜査が長期化する見通しを示した。
 捜査本部はこれまでに、五人以上の付近住民の証言から若花菜さん宅玄関のガラスが割れた時間を午後六時十分から同二十分の間としている。
 事件発生当時、若花菜さん宅で無施錠だったのは玄関など二カ所。帰宅した母親が、玄関のかぎが掛かっていなかったことを確認している。しかし、もう一カ所について、山田寿夫県警刑事部長は具体的な場所などを明らかにしていない。また、凶器についても「鋭利な刃物」と述べるにとどまった。
 かぎは若花菜さんと母親(46) 、兄(16)の三人がそれぞれ持っていた。二年ほど前では、合かぎを小屋においていた時期もあった。
 松尾本部長は「県警の力が試されている。こんなに筋が読めない事件はないが、腰を据えて基礎調査を重ねている。やや長期化しそうだが、必ず解決できると思っている」と話した。
依然犯人像に迫れず
八戸の女子中生刺殺事件から三週間
吸いがらから血液型特定
絞りきれぬ接点、動機
逃走経路、手段もナゾ
十七日で発生から三週間を迎える。八戸署の捜査本部は十六日までに延べ三千三百人余りの捜査員を投入、現場に残された遺留品や複数の足跡、指紋などを基に懸命の捜査を進めているが、直接犯人に結びつく有力な手掛かりは得られず、捜査は長期化を余儀なくされている。街中でしかも夕食時と目撃される可能性が高い時間帯での犯行。捜査本部や関係者の証言を基にこの不可解な事件を振り返ってみる。
 市内から寄せられた不審人物、過去の性犯罪の前歴者など捜査
本部が十六日までにリストアップした不審者は二百四十五人。このうち百七十四人の調べを終えたが事件に関連する人物はいなかった。残り七十一人についても調べを進めている。
 鑑識捜査も進み、たばこの吸いがらから血液型を特定したほか、家族以外の複数の足跡、指紋を検出、不審者との照合を急いでいる。灰皿代わりに使った缶コーヒーからは指紋が検出されず、捜査本部は犯人が手袋をはめていたか、ふき取った可能性もあるとみている。
犯人像
 犯人と若花菜さんの接点は何なのか、殺害の動機は何なのか。捜査本部でもいまだに絞り切れないでいる。現場や遺体の状況から、当初は乱暴を目的とした変質者か顔見知りによる計画的犯行との見方が強かった。しかし、解剖の結果、いたずらされた形跡はなかった。通電していたこたつの上にあった飲み干した缶コーヒーにたばこの吸いがら二本という現場の状況から、面識のある人物で会話もあったとも考えられる。ところが、遺留品が偽装のために置かれたとすれば、流しの線も捨てきれない。
 さらに、殺害方法も異常なほど残忍なことも犯人像を複雑なものにしている。
犯行時間
捜査本部は、若花菜さん宅の玄関のガラスが割れた時間を、近所の複数の証言から午後六時十五分~二十分の間と絞りこんだ。また、若花菜さんの左ひざの傷は、鋭利な刃物で切られた首やふくらはぎの傷とは異なる浅い傷のため、捜査本部では「ガラスで切った可能性もある」とし、若花菜さんが犯人から逃げるためガラスを割ったとの見方を強めている。
 母親が帰宅し遺体を発見したのは同六時二十二、三分ごろ。犯人はこのわずかな数分間で若花菜さんを殺害、逃走したことになる。
 事件当時、若花菜さん宅の玄関と居間の掃き出し窓は無施錠だった。玄関側に面した道路は、比較的明るく人通りもあるため、犯人は掃きだし窓から出て、若花菜さん宅西側の小窓から逃走したとも考えられるが、目撃証言が乏しく明確な犯人の逃走経路、手段は依然ナゾのままだ。
十一月二十七日土曜日
「筋読みできぬ」捜査難航
八戸の女子中生刺殺から一ヵ月

捜査本部は二十六日までに延べ四千九百人余の捜査員を投入、若花菜さんの家族や親類、学校関係者ら六百九十四人から事情を聴くなど事件の全容解明に全力を挙げているが、依然として直接犯人に結びつく有力な手掛かりは得られておらず捜査は難航を極めている。粘着テープで口をふさぎ、両手を後ろでに縛るなど異常なほど残忍な手口、わずか十分余りでの凶行と、捜査本部でも「筋読みのできない難事件」というこれまでの捜査の流れを追った。
有力手掛かり依然ナシ
不審者三百七人が浮上も
玄関付近で刺された?
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◆捜査
捜査本部はこれまで、城下地区を中心に七百六十七世帯、千七百八十五人から聞き込みを行った。市民から寄せられた情報などを基に、捜査線上に浮上した不審者百五十四人のうち、百十人について身辺捜査をしたが、事件と直接結びつく人物はいなかった。
 また、八戸署管内における性的犯罪の前歴者や八戸二中、JR本八戸駅付近に出没している性的変質者ら、同本部がリストアップした素行不良者は三百七人。このうち百五人について調べを終え、市内の女子高生に対しわいせつな行為をした飲食店従業員(二八)を逮捕、車で女子中高生を追い回す中年男ら十数人に厳重警告を与えたが、事件にかかわる人物は出ていない。