2008年10月11日土曜日

時効せまる・若花菜さん殺し 3

現場状況
凶器なく遺留品わずか

若花菜さんの遺体は、六畳寝室で見つかった。傍らには、ジャージーのズボンなどが置かれ、台所にあるはずの包丁が放置されていた。これまでの捜査本部の調べで、この包丁には血痕はなく、家族以外の指紋は検出されず、凶器の可能性は考えにくいことが分かっている。
 隣り合う六畳居間にあるこたつにはスィッチが入っており、室内灯がついていた。帰宅した若花菜さんがつけたとも考えられるが、こたつの上には犯行に使われたとみられる粘着テープの残りとたばこの吸いがら、缶コーヒーが残っていた。
 殺害現場には凶器はなく、遺留品とみられるのは若花菜さんの口に張られた粘着テープのほか、こたつの上に置いてあった使い残しの粘着テープ、缶コーヒーの空き缶、二本のたばこの吸いがらだけと少ない。
侵入時間
帰宅直後待ち伏せか

 捜査本部は侵入時間について、若花菜さんの帰宅直後か、あるいは待ち伏せしていた可能性もあるとみて両面から捜査している。
 犯行当日の朝、若花菜さんの後に母親と兄がほぼ同時に家を出た。玄関にはいつもカギをかけており、捜査本部に対して「この日もカギをかけたはず」と証言しているが、窓の一カ所はカギがかかっていなかった。
 鑑識の結果などから捜査本部は「この窓から侵入した形跡は認められない」としている。が、遺留品の状況などから、犯人は若花菜さんの帰宅前に何らかの手段で侵入、待ち伏せしていた可能性も捨てきれない。
犯人像
解剖状況から怨恨も

 若花菜さんの遺体には争った際に生じた傷とは考えにくい不自然な切り傷があった。さらに、現場には血が飛び散った形跡は見られず、他の血痕も廊下に一カ所しかなかった。このような状況から、最初から殺害の意図を持った犯行の可能性も考えられる。
 解剖の結果、致命傷となった心臓の刺し傷のほかにも首やひざなどに不自然な切り傷が何カ所も確認されていることからいたずら目的以外に怨恨の線も否定できない。
十一月七日日曜日
捜査線上の60人シロ
若花菜さん事件
有力物証乏しく難航

捜査本部は六日も凶器の捜査や聞き込み捜査に全力ををげたが、直接事件に結びつく有力な手掛かりは得られなかった。
 捜査本部のこれまでの調べで、若花菜さんの帰宅時間は午後六時前後とみられるが、帰宅直後に若花菜さん宅を訪れた集金人の証言などからいくつかの疑問点も浮上している。集金人は若花菜さんの顔を知っており、訪れた時の若花菜さんの着衣は紺のジャージーだった。しかし、遺体で発見された時の着衣は、紺のジャージーの上に白っぽいヨットパーカーを着ていた。帰宅途中はそのヨットパーカーの上にジャンバーを着ている。犯行時間帯は窓ガラスの割れた音を近所の人が聞いた午後六時十五分ごろまでの間の可能性が高いだけに、若花菜さんがなぜ一度脱いだヨットパーカーを着たのか。
 捜査本部はこれまでに、付近住民の目撃情報から犯行時間帯に現場付近を通った複数の人物をはじめ不審者、前歴者など捜査線上に浮上した九十人近くの身辺捜査を行い、このうち約六十人の調べを終えたが、事件に関連する人物はなかった。六日午前、記者会見した山田寿男県警刑事部長が「今のところズバリこれだというものは出ていない」と述べる通り、決め手となる有力な物証だ乏しく捜査は難航している。
十一月八日月曜日
女子中生刺殺事件
わずか数分間の犯行か
捜査本部はこれまでの調べで、若花菜さんの左ひざの切り傷は、逃げようとして玄関のガラスで切った可能性も考えられないことではない、とみている。
 捜査本部によると若花菜さんのひざの傷は、首やふくらはぎにあった傷とは違い、あまり深くなく、鋭利な刃物によって生じた傷とは考えにくいという。このため、若花菜さんが犯人から逃げようとした際にガラスで切った傷との見方も捨て切れない。
 一方、捜査本部では「テレビのニュースを見ていた時にガラスの割れる音がした」という近所の人の証言を基に、若花菜さん宅玄関のガラスが割れた時間の特定を急いでいるが、午後六時二十分すぎとの見方を強め、捜査を進めている。この時刻ごろに、若花菜さんによって割られたとすれば、犯行時間は母親が帰宅するまでのわずかな数分間となってくる。
十一月九日火曜日
女子中生刺殺事件
遺留品のたばこはパック販売
マイルドセブンライト有力
一般小売店で買えず
血液型も特定、入手経路の解明急ぐ
捜査本部は八日までに、現場のこたつの上にあったたばこの吸いがらから血液型を特定したほか、パックで販売されているマイルドセブンライトとの見方を強め入手経路の解明を急いでいる。
 捜査本部のこれまでの調べによると、犯行現場に残された遺留品は、若花菜さんの口に張られていた布製の粘着テープのほか、こたつの上に置いてあった灰皿代わりに使った青色の缶コーヒーの空き缶、たばこの吸いがら二本、使い残しの粘着テープなど。これら遺留品の鑑識結果から既に粘着テープと缶コーヒーのメーカーが判明。さらに八日までにたばこの吸いがらから、吸った人物の血液型を特定した。二本とも同じ血液型だった。
 また、たばこのナンバーから日本たばこ産業盛岡工場で製造されたパックのマイルドセブンライトとみられる。同製品は全国に流通している。
 同社などの関係者によると、パックは一般小売店では買えず、スーパーやコンビニエンスストアなどでしか扱っていないが、バラして自動販売機で販売されていることもある。マイルドセブンライトは昭和六十年七月から発売され、八戸市内では販売量がベスト3に入る人気銘柄だという。