2009年1月2日金曜日

昭和三十五年の八戸

新しい南郷の村つくり(デーリー東北新聞)
市沢新村長を囲んで
南郷村一万七百人の台所を守る新村長に市沢安恵氏(六八)が選ばれた。同村は発足してまだ四年目。新しい村つくりもこれから脂がのろうという時である。それだけに市沢村政に対する村民の期待は大きい。そこで本社は市沢村長と市沢村政を助ける村議会を代表して中村議長に集まってもらい、座談会を開いて新しい村つくりに対する抱負と意見を聞いてみた。
しこりは残さない
合併協定を早く実現
司会 南郷村も新村長が決まって新しい村つくりが始められるわけですが、やらなければならない問題、またやるべき課題が多いと思います。そこで今日は新村長の施政方針、新しい村つくりの構想を中心にいろいろと語ってもらいたい。まず村長をやろうとした動機から。
市沢 南郷村は昭和三十二年に島守村と中沢村が合併して発足したものだが、その時、私は中沢村の村長をしており、合併協定も作った関係から、そのうちでまだ実行されていないものが多いのを見て早急にやらなければと思った。
中村 確かにこれは大きな問題、それを村民も望んでいると思う。
司会 これから村政を担当する訳ですが、現実の問題として合併村の運営は必ずしもうまくいっていない。特に旧村単位にまとまろうとする意識、部落感情が根強く残っている。
市沢 これは本村だけに限った問題ではない。合併村共通の悩み、でも本質的にはそう悪いわけではないですよ。
中村 そりゃ島守も中沢も同じような農村ですからね、多少は部落感情も出ますが、芯から対立しケンカしているわけではない。
司会 しかし、本質的にはそうでも、選挙で激化した。今回の選挙がそうです。
市沢 結果的にはそうなった。しかし、将来にしこりが残るようなことはない。
村民の交流を強化
通信、交通機関を充実
司会 そこで南郷村の場合はこうした村民感情の融和策というものが政治の一つの着眼となる。旧村意識、村民感情の対立をなくし挙村一体の体制つくりが第一の仕事だと思う。
市沢 同感、私も十分考えている。村民交流が第一。そのために通信、交通機関の充実をさせる。現在はこれが野放し状態。こんどの選挙で村内を廻っておどろいた。八戸まで四十分でいけるのに、同じ村内の島守、中沢が一時間もかかる。電話は島守と中沢の二局だ。これを早く一本にまとめたい。交通、通信を整備すると村民の交流が盛んになる。
司会 しかし、次の選挙を機会にまた村民感情が悪化したり、派閥感情が表面化する心配はありませんか。
市沢 私は老年だし、これで政治生活は終わりと考えている。最後のご奉仕ですよ。だから娑婆っ気がなくなって気は楽ですよ。
司会 ところで議会の新村長に対する協力体制はどうですか。
中村 議会はいつも村政に協力してきました。どうすれば村政のためになるかということです。大局的見地で村政に協力する。
畑作振興に重点
農家生産所得の向上
司会 新しい村つくりの基本構想、設計図から伺います。市沢 島守、中沢地区は水田がほとんどない。畑をいかに高度利用するか、つまり畑作振興、これが中心になる。現在、葉タバコがある程度の比重は占めていますが、まだまだ雑穀が主体で農家の生産所得は非常に低い。これをいかにして高めていくかが新しい村作りの鍵。村の立地条件から、畑作に酪農、葉タバコと出稼ぎを組み合わせて考える。つまり農地をたくさん持っている人は酪農を取り入れ、中くらいは葉タバコ、耕地の少ない人は出稼ぎをする。酪農は飼料が問題となるのでテンサイと結びつけ、牧草とテンサイ、雑穀などと二本立て、三本立て経営を奨励、また葉タバコは現在でも県内の二割以上を消化、すぐ現金化され価格も安定しているので将来性あり。