2009年2月25日水曜日

市役所前かがり火えんぶりに十一万七千人

八戸は夏の祭り、冬の祭りの二つを持つまれな土地。それが総合力の源だというのが小林市長の持論。観光は総合力だと言われる。まさに至言。この観光に力を注ぐのが観光課、そして観光協会、この体質も大分改善されつつある。市役所べったりから独歩せんとの努力の跡あり。今一歩か。
平成七年から市役所前広場でかがり火えんぶりが実施され多くの人々を集め、これを楽しみにする市民も多い。旧暦の大寒に開かれるから、くそ寒い。それでもめげずに張り切る観光課職員。あちらこちらに無線機を持ち案内からかがり火への薪の補充指示とこうした努力があるから、吐く息を白くしながらえんぶりを楽しむことができる。
 郷土芸能のえんぶり、今年も生きて祭囃子を聞いた。海音寺潮五郎がこんなことを言っている。もう命の財布に大きな札は残ってなく、小銭ばかりだ、と、若い衆には判らぬことだが、頭に白髪を積む頃ともなれば、上手いことを言うなと感心。
さて、諸君は恵比寿舞の子どもが何か言いながら踊っているが、その文句をご存知か。あれは、「一番の春にはえんぶだごうの金を吊り上げて、二番の春には金銀の鯛をどっさりと釣り上げて、三番の春には竜宮様のお姫様を釣り上げて、ここの若旦那とご夫婦なして、円満長者と栄えるように、なにをともお恵比寿だ、お恵比寿舞とも囃せやい」と言っているのだが、文句なんかなくても舞の面白さと鯛を釣り上げるかな? アラ、落としたの黒子とのやりとりの妙にある。舞台だと黒子が見えないが、この呼吸を見ずにえんぶりが素晴らしいとは言えない。
えんこえんこも可愛いが誰が何と言っても恵比寿舞が一番だ。カチャカチャ、ドンドンとえんぶり囃子が遠くから練って来る。立て付けの悪いガラス戸を開けて頭から手拭で頬かぶりしたイサバのかっちゃが前掛けで手をぬぐいながら出てくる。これで寒い冬も終るなと、八戸人はえんぶりを心待ちにするのサ。
金襴の衣装を着た子ども、どんぶく(綿入れ)を着てふっくらした子ども、どれをとってもいじらしい。鼻に白の一本筋は子馬を思わせる。皆が練習の成果を見せるが、やはり中居林のえんぶりが素晴らしい。頭取がしっかりしているから舞が崩れていない。子供たちが厳しく親方から仕込まれているから礼儀が正しい。目頭が熱くなる。塵一つ、わらぐつの藁しべ一本かがり火えんぶりの控え室に残さない。そして出番ともなれば大きな仕種を見せ、観客の拍手を誘う。いやあ、八戸は素晴らしい所でやんす。伝統を支えるんだの意識が市民に横溢している。
ところで、二枚の写真が薄暗くないのに気付いたかい? これは観客動員数に気を良くした業者連中が早くからもやるべと欲をだして4時から始めた。ところが暗くないので折角のかがり火も昼行灯さながらだ。
ものにはほどがある。美味い物を食うには熱いものは熱いうち、冷たいものは素早く食えの鉄則。虻蜂取らずにならぬようご用心ご用心。それにしてもステージ付近をウロウロしながら観客と握手をしていたカラオケの姉ちゃんに声に張りがあり、なかなかやるなと感心。昔のように「はちのへ今昔」がテレビ番組を持っていたなら出演の声をかける所、八戸も広い広い。やる気のある連中をどう方向付けるかが課題なのだろう。